『急性外傷と亜急性外傷の違いは』
もし患者様が専業主婦で「毎日繰り返し、家の窓の拭き掃除をしたり、洗濯物を干す作業(動作)」していたら肩が痛くなった」との事で来院されたら先生方は保険を適用して施術しますか?
今更ですが、柔道整復師が健康保険を適用して施術できる範囲は、急性外傷または亜急性外傷による骨折および脱臼、捻挫、打撲、挫傷または筋腱などの軟部組織の損傷と定義されています。もちろん骨折と脱臼の施術は医師の同意が必要になります。
さて、ここでの定義で「急性外傷または亜急性外傷」としていますが、急性外傷と亜急性外傷の違いはご存じでしょうか。
「そんなの当然知っているよ!」という方もいれば「学生時代に習ったけど忘れた」という方もいらっしゃると思いますので、僭越ながら少々おさらいさせて頂きます。
急性外傷は、原因と結果の間にはっきりとした直接的関係が存在するもので、骨・関節・筋肉・軟部組織に加えられた瞬発的な力によって発生します。たとえて言えば「何月何日、ランニング中に路上の段差につまずいて身体バランスを崩し、足関節を内返しに捻り負傷した」という、よくある怪我のパターンです。
つまり亜急性外傷とは何かしらの微細な外力が体に蓄積して、ある日突然症状や痛みや症状を発する怪我の事を言います。
スポーツやダンスなど比較的強めの外力だけでも反復動作ではなく、微細な外力とは、楽器の演奏、日常生活など一つ一つの動作自体はさほど強くないが、長時間・長期間に動作を反復する事により亜急性外傷が発生する場合があり、これらも保険適用範囲になるという事です。
但し、この考えは柔道整復学的な定義であり、整形外科では急性が受傷後2日間程度までの怪我、亜急性は受傷してから2~3週間程度の時間が経過した怪我であると定義されているようです。
つまり亜急性に関しては、医学的見地や法令として厳密な定義がなされていないのが現状なのです。
結局個別に判断していくしかないと思いますが、仕事上での特定作業の繰り返しは労災になりますし、単なる筋肉疲労か亜急性外傷かを見分けることが難しいなど正直面倒くさい点はあります。
また急性外傷は患者さんも怪我をしたという認識は強いですが、亜急性外傷は怪我をしたという認識が弱いと思われるため「この症状や疼痛は筋肉疲労ではなく、亜急性外傷という怪我によるものである」事をよく説明し納得して頂く必要もるかと思います。
ただ、保険適用により施術できる範囲を広げることは、接骨院・整骨院だけではなく、患者さんにとっての利益にもなるので、みなさまがんばってください。