自賠責請求 part4

2023/07/31

いつもお世話になっております。ミニッツ仁藤です。今回も引き継ぎ 自賠責請求について記載します。 
part1 part2 part3 はこちら

自賠責の請求方法には加害者請求・被害者請求の二通りの方法があります。 加害者請求の流れを図示します。

加害者請求(任意一括払い)

①接骨院は、患者に治療(施術)をおこない、治療費を患者に請求
②患者は治療費の支払いをおこなう
③患者は治療費を任意保険会社(加害者)に請求
④任意保険会社はかかった治療費を患者に立替支払いする
⑤任意保険会社は自賠責保険会社に立て替えた治療費を請求
⑥自賠責保険会社は任意保険会社に立て替えた治療費を支払い

このように 任意保険会社が事故の加害者代理人となる事によって、自賠責分を含めた請求手続きをおこなう事を 加害者請求(任意一括払い)といいます。

実際はこの流れの中に 損害保険料率算出機構 (調査会社)が入りますが今回は割愛します。

図を見ていただくと分かりますが、任意保険から接骨院への入金がありませんが、実は本来この流れが自賠責の請求の流れになります。


治療費の請求権があるのは患者さんになります。
自賠責の用紙の右下に~~殿 に 請求中・受領済み といった項目がありますが、
こちらに患者さんのお名前を記入するのはそのためです。
希に~~保険会社に請求中と書かれる先生がいらっしゃいますが、
請求権があるのは患者さんになりますので、 保険会社の名称を書くのは間違えです。

自賠責は窓口負担無しで、施術される事が多いと思いますが毎回金額を徴収して、
患者さん本人が請求する事もできます。
但し、手続きが若干面倒なのと毎回治療費を支払う事が、
受診抑制に繋がってしまうため任意保険会社が患者さんの代理人として、
請求の委任をうけ接骨院から保険会社へ請求 → 保険会社から接骨院に入金 といった流れになります。本来この代理人行為は弁護士以外できない行為ですが、事故の示談代行を保険会社が請け負っているため、
金融庁から許可されているようです。
代理人というよりは示談のアジャスターといったものになるのでしょう。

このように加害者が請求手続きをとる方式を加害者請求と呼び、一般的にはこの請求方式が殆どです。では次に被害者請求について記載致します。

被害者請求(自賠直接請求)

加害者請求とは異なり、被害者本人が相手の自賠責に直接請求手続きをとる方式を被害者請求と呼びます。
図を見ての通り任意の保険会社の関係がなくなる形になります。被害者請求の場合も加害者請求と同様に患者さんから 窓口金を貰う 貰わないはどちらでも選択できます。


○加害者請求のメリット

任意保険会社が手続きを行うので手間がかからない。

デメリット

任意保険会社が認定のために積極的に書類を集めるものではないので、
後遺障害が実際よりも低い等級認定になることがある。

○被害者請求のメリット

積極的に証拠書類を集めれば、より適正な等級認定が受けられる可能性があり、
等級認定されると、相手方との示談前でも保険金が支払われます。

デメリット
書類作成の手間がかかる。 入金が遅くなる。

どのような場合に被害者請求をおこなったほうがいいか?

ケース1
加害者側が任意保険に加入していない。


「原付バイクにぶつけられたけど、加害者が高校生の子で任意保険に加入してなかった
 最初は加害者の親が治療費払ってくれていたけど 途中から連絡が取れなくなった」

自動車・バイクに乗る以上 任意保険加入は当たり前ですが、不況のせいか、リスク管理ができない人が増えたのか、お話を聞いていると任意保険に加入していない人が少なからずいるようですが、個人的には論外としか言いようがありません。
良く聞くのが 高校生の乗った原付バイク。 任意加入しているほうが少ないような気もします。

任意に入っていないと治療費は全額負担になってしまうと思われている方がいますがその場合でも自賠責に治療費の請求は可能です。任意保険に加入していれば請求の手続き支払い等は全ておこなってくれますが、自賠責の保険会社はそこまで親切にしてはくれません。正直 お金にならない仕事だからでしょう 。


ケース2
患者本人の事故過失も多い

患者本人の過失が多い場合、加害者側(任意保険会社)があまり取り合ってくれないケースがあります。
自賠責は被害者救済を目的とした制度ですので、過失割合が多い場合でも自賠責は使用できますが(自賠責請求part1を参照下さい。)、任意保険では加害者被害者の過失から補償額を算定するため、患者さんの過失割合によっては、治療や補償が充分にうけられない事もあります。
過去に聞いた話ですが、「過失があるのだから治療費は一切払えない」と言われたケースもあったようです。
このような場合でも被害者請求をおこなえば、自賠の範囲内で治療が受けられますし、高額な治療費も内払い制度を使用して、長期にわたり立て替える必要はなくなります。


ケース3後遺傷害等級認定に納得がいかない

症状固定後に残ってしまった痛みや、逸失利益に対して支払いの金額等級になりますが、
等級によって支払われる慰謝料が格段に上がります。
参考までに一番等級の低い 14級が75万円 12級が224万 (共に自賠責基準)3倍近い金額になります。
等級の認定は任意保険会社が事前認定としておこなってくれますが、わざわざ支払額を高くするために、認定書類を集めてくれるでしょうか?
立証するための大切な診断書やMRI写真がしっかりと審査期間に届いていなかったら?
後遺障害の立証責任は他ならぬ 患者さん本人にあります。被害者請求の場合、もちろん書類集め手続きは全部自分でおこなわなければなりませんが、納得のいく等級認定が受けられる可能性があります。

被害者請求 必要書類

②以外に関しては、保険会社からコピーをもらう事も可能になので、まずは相手側任意・自賠に相談する。
書類に必要事項が記載されているので、貰えればこちらの方が楽。
被害者請求に必要な書類を欲しいと連絡すれば送付される。
下記は自身で書類を揃えるための、一例です。
尚、診断書・振込料・印鑑証明代・診断書代なども請求する事はできる。

①自賠責保険支払い請求書兼支払指図書
 ネットで名称検索するとダウンロード可

②請求者の印鑑証明書
 区役所市役所に取りに行く。

③交通事故証明書 (*事故種別が人身事故である事が前提)
 交番(どこでも可)にて、交通事故証明書申請書を貰う。
 郵便局にて 1通600円を振り込む (振込料70円)
 発生日より2週間前後で、発行される。

④事故発生状況報告書
 ネットで名称検索するとダウンロード可

⑤診断書 
 病院 又は接骨院で発行された物。
 事故後来院まで日が空いてると、認められない可能性あり。

*事故種別が物損の場合 自賠責は本来使えません。
事故直後に警察に医師の診断書を提出してはじめて人身事故扱いになります。
この際加害者には 刑事処分・行政処分が科せられます。
(実際は軽微な事故の場合 お咎め無しの事が多いようですが)
軽微な事故の場合、大抵は物損事故扱いになっていますが、実際は人身事故扱い同様に医療機関での自賠責の診療が受けられます。後から人身事故証明書入手不能理由書といった書類を提出すれば、物損扱いでも人身事故扱いとして自賠の補償が受けられます。

人身事故証明書入手不能理由書は簡単に説明すると「事故当初は痛みもなかったので物損事故で処理したけど、
あとから頚が痛くなって治療を受けたい」など後日人身切替にしたい場合に出す書類です。


この書類を出す事によって、加害者・被害者・警察を交えた現場検証等をおこなわずとも人身事故の扱いにする事が出来ます。変な話だと思いませんか?
前方不注意等 安全運転義務違反をしているが為に交通事故がおきているわけですからそれ相応の違反罰則を受け、正規の手続きで人身事故に切り換えるのが本来の道筋なのに書類1枚で何にもなかった事になるわけです。「加害者が人身切替に応じてくれず、怪我の補償がうけられない」といった事がないよう被害者救済の目的で作られた制度だと思いますが、加害者の安易な罰則逃れを増長しているような気もします。


被害者請求を行うにあたっては、実はそれほど知識や労力を必要としません。
加害者側の自賠責会社に方法を聞けば必要書類は基本的に準備してくれますし、
相談ものってくれると思います。

加害者請求・・・加害者が請求手続きをとる
被害者請求・・・被害者が請求手続きをとる


前述したようにどちらが手続きを行うかが違うだけの話で、加害者側に誠意がない・後遺症等級認定に不服がある等、相手任せにできないケースの時には被害者請求をした方がいいでしょう。


最後に被害者請求とは若干、話がそれますが交通事故で自由診療ではなく健康保険を使った請求に関して少し記載します。
健康保険を使用する場合は、被害者が自身の加入している保険(国保・健保等)に第三者行為届けを提出すれば、健康保険での治療がうけられます。
窓口で健康保険の一部負担金を支払う必要はありますが、(保険会社に連絡すれば 窓口0円で後から整骨院に振り込まれるケースもあります。)患者側にとっては健康保険を使用する事に対して特にデメリットはありません。
自由診療の高度な治療は健康保険外になってしましいますが、保険適用内の治療でおさまるのであれば、過失割合が多く治療が120万円を越えそうな場合はむしろ健康保険を使用した方が最終的な支払いも少なくなります。
院としては高額な自賠責の治療の方が、早期回復を見込めるのと請求額も健康保険より高いので、健康保険の使用はして欲しくはないかもしれませんが、金銭的な面で患者さんの負担を考えると健康保険を使用した方が良いケースもあります。保険会社が支払額を抑えたいために 健康保険の使用示唆をしてくるケースもありますが。


尚、自賠責で健康保険の治療はおこなっていないという院が希にあるようですが、
保険診療機関である以上患者から健康保険の使用を求められた場合は 断る事はできません。
「事故患者の健康保険の切替をなんとか止めたい」といった号相談を頂きますが、
患者本人が納得している以上は無理です。「健康保険では治療内容・時間等 制限があるので早期回復を望むなら、自賠責での診療をしてみては?」と患者本人の意思決定を覆すしか方法はありません。

自賠責の御相談は良くお客様から頂くのでやはりトラブルが多いのかもしれません。
保険会社からしたら、整骨院の施術は 夜遅くまで施術ができ長期にわたりやすい事・ 画像診断のような第三者が判断つく資料がない為、示談がなかなかできず、あまり通って欲しくないのが本音なのかもしれません。
自賠責の請求額は健康保険の約5倍近い料金になります。
治療に関しても請求書類に関しても健康保険とは差別化する必要があるのではないでしょうか?5倍の治療というのは現実的ではありませんが、書類に関しては 毎月の経過報告・治療スケジュール・治癒見込みなど信頼性がある書類を出していかなければ保険会社も疑義を持たざる得ないでしょう。


昨年10月から自賠責請求を記載しておりましたが、一旦 自賠責に関してのコラムは今回で終了致します。
稚拙な文章で恐縮ですが、ご閲覧いただきましてありがとうございました 。